新しい会社法では、取締役一人での会社運営が譲渡制限株式会社に限って認められるようになりました。

 取締役一人会社になれば、取締役会を開く必要がありませんので、経営のスピード化が図れるとともに、取締役会議事録の作成など余計な事務処理等も省略できます。
 役員が減れば役員給与も節約できるかもしれません。

 実は、オーナー社長が実権を100%握っている中小企業の場合、実態は取締役一人会社と同じです。
 つまり、会社法のこの規定は形式を実態に合わせた改正ともいえます。


 取締役一人会社になるためには、株主総会で定款を変更する必要があります。
 また、一般的にはその株主総会において従来の取締役は辞任することになります。
 その上で、その株主総会の議事録と変更した定款を用意して登記をすればいいわけです。

 では、一人株式会社になったために辞任した従来の取締役に対する役員退職金はどのような扱いになるでしょうか。


 一般的には役員退職金を支払うのが普通です。
 役員退職金は必要経費として損金に算入できます。
 つまり、会社が黒字であれば支払った分の節税効果が期待できるのです。
 また、資金繰りが苦しい場合でも、株主総会で決議すれば分割払いも可能です。
 たとえ、その取締役が身内、つまり奥さんや子供で「実質的に財布は一緒」のケースであっても、役員退職金は必要経費として認められます。


 だからといって、あまりにも高額な役員退職金を支払うと「過大な役員退職金」として過大分の損金算入が認められないので注意が必要です。

 また、身内の場合には「過大な役員退職金」と認定されるリスクが高いため、それに備えて「役員退職金規程」または「株主総会議事録」の用意も必要になります。

 役員退職金は勤続年数も長くなりやすいことから、ある程度のまとまった金額になるケースも多いようです。

 そのときに、まとまった現金が会社にあれば、支払いにも問題ありませんが、なかなか厳しい場合もあります。

 そのような場合に備えて、生命保険などを活用する方法もあります。