【質問】
同じ会社で働いている同期の知人と一緒に独立し、新しい会社を設立する予定です。
2人とも役員(取締役)となり、私が代表取締役を務める予定です。
会社法が施行されてから、取締役の任期は最長10年になったとききます。
登記するにあたって、取締役の任期は何年に設定するのが適当でしょうか?

【回答】
もし、取締役の任期を最長の10年にした場合、登記手続きの手間や費用を抑えられるメリットがありますが、一度選任した取締役を正当な理由なく解任した場合は解任によって生じた損害を賠償しなければならないリスクもあります。
知人の方との信頼関係、メリットとリスクなどを考え、後々もめ事に発展しないように任期を短めに設定することも考慮すべきでしょう。



 ご相談の方のおっしゃるとおり、会社法施行前までの取締役の任期は2年を超えることができませんでしたが、会社法の施行によって、発行するすべての株式が譲渡制限株式である会社(いわゆる非公開会社)の場合には、取締役の任期を定款で最長10年まで伸長することができるようになりました。
 また、定款に記載する任期を取締役ごとに設定することも可能です。

 新設会社の場合、取締役の任期を10年とするところが多いのではないでしょうか?

 株式の譲渡制限規定を置いている会社はオーナー企業型の会社が多く、役員が変わることが稀です。
 ですから、任期を長期(10年など)にしておいたほうが、重任(再任)登記の回数が多くなってしまう短期(2年など)に比べて、登記手続きの手間と費用を削減できるというメリットがあるからです。

 とはいうものの、リスクがあることにも注意が必要です。

 会社法第339条第1項では、株主総会の普通決議にて、特に理由を付すことなく、取締役の解任ができると規定しています。

 ただし、同条第2項において、「正当な理由なく解任された者は、解任によって生じた損害を賠償できる」とも規定しています。

 その取締役が不正行為や法令違反行為をした、職務への著しい不適任(経営能力の著しい欠如)などが、会社法の定める「正当な理由」に該当するようです。
 (ちなみに解任決議が成立するとその会社の登記簿にも「解任」と記載されます。企業イメージが低下する、と敬遠する方もいるようですね)

 10年はあっという間ですが、長い期間です。
 その間には何が起きるかはわかりません。

 選任した取締役は必ずしも期待に応えてくれる人物であるとは限りませんし、初めは同じ方向を見ていた場合でも時間の経過とともに変わってくることも、よくある話です。

 そうなったときに、総会の決議で解任できたとしても、その理由に合理的なものがなければ「自分に落ち度はない」と思っている方なら、おそらく残りの任期中の役員報酬を要求してくるでしょう。

 こうしたリスクを考えると、取締役がこれから先も自分1人だという場合や、身内や十分に信頼できる人物を取締役として迎え入れる場合でなければ、任期は10年より短くする、という選択もあり得ます。
 
 ご相談の方の場合は、知人との信頼関係やメリット・デメリットなどを考え、後々もめ事にならないよう任期を短めに設定しておくことも一つの手段として考えておくべきかもしれません。


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