【ポイント】
配偶者居住権があれば、所有権がなくても配偶者は当該建物を使用収益することが可能となる「配偶者居住権」が認められました。

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今年7月、相続制度を見直す改正民法が参院本会議で可決、成立しました。
この中で、新設された「配偶者居住権」が注目を集めています。

配偶者居住権とは、配偶者相続人が、被相続人の遺産である建物を、無償で使用及び収益することができる権利です。
言い換えれば、配偶者居住権があれば、所有権がなくても配偶者は当該建物を使用収益することが可能であり、所有者に追い出されることもなくなります。

たとえば、夫所有の自宅を妻と子が相続するような場合で、自宅を子(=配偶者相続人ではない第一順位の相続人)が相続するような場合、これまでだったらば、建物の所有権を取得しない妻は、自宅から出て行くよう要請されることがなきにしもあらず、だったわけです。
このような状況では配偶者相続人の生活を守ることができないため、新たに「配偶者居住権」を認め、配偶者が所有権を得ずとも建物にそのまま居住できる権利を認めたのです。

配偶者居住権は、原則として次の要件が揃えば成立することになります。
(1)配偶者が、被相続人の遺産である建物に、相続開始の時に居住していたこと
(2)以下の3要件のいずれかを満たすこと
(ア)遺産分割によって、配偶者が配偶者居住権を取得する
(イ)配偶者居住権が遺言によって遺贈の目的とされる
(ウ)被相続人と配偶者との間に、配偶者居住権を取得させる旨の死因贈与契約がある


なお、配偶者居住権を具体的な遺産分割計算で示すと、このようになります。

【例】
相続人=妻(自宅に引き続き居住)と子供1人
遺産額=6,000万円
(自宅3,000万円(居住権1,500万円、所有権1,500万円)、預貯金3,000万円)
相続割合=法定相続分による


<改正前>
妻の相続分=自宅(3,000万円)+預貯金0円
子の相続分=預貯金3,000万円

<改正後>
妻の相続分=自宅の居住権1,500万円+預貯金1,500万円
子の相続分=自宅の所有権1,500万円+預貯金1,500万円


法定相続分は妻も子も2分の1(相続額3,000万円)となります。そのため、改正前は、妻は自宅を相続すると預貯金の相続ができなくなり、今後の生活に大きな不安を感じる要因にもなりました。
しかし改正後は、妻が配偶者居住権を相続することで自宅に住み続けられ、さらに預貯金1,500万円を相続できるため、今後の生活への不安が軽減されます。

自宅などの不動産を配偶者相続人が相続すると、近い将来において開始するであろう二次相続で再び不動産の相続が問題になりがちです。
その手間や費用の削減のため、相続が開始し、遺産分割協議を行う際に、子供が不動産を相続することが少なくありませんでした。今後の相続に、一石を投じる改正になりそうですね。


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