【ポイント】
「個人事業者の事業用資産に係る相続税の納税猶予制度」の猶予税額の計算は、非上場株式等についての相続税の納税猶予制度の特例と同様とし、一定の場合には、猶予税額の全額又は一部が免除となることが、平成31年度与党税制改正大綱に盛り込まれました。

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認定相続人が、2019年1月1日から2028年12月31日までの間に、相続等により特定事業用資産を取得し、事業を継続していく場合には、担保の提供を条件に、その認定相続人が納付すべき相続税額のうち、相続等により取得した特定事業用資産の課税価格に対応する相続税の納税を猶予する「個人事業者の事業用資産に係る相続税の納税猶予制度」が、平成31年度の与党税制改正大綱に盛り込まれました。
非常にざっくりしたイメージでいうと「跡継ぎである相続人が、事業で使う土地や建物、自動車等を相続して事業を継続していく場合は、事業用に相続した土地や建物、自動車等にかかる相続税の納税を猶予する(ただし担保が必要)」制度です。

この猶予税額の計算方法は、非上場株式等についての相続税の納税猶予制度の特例と同様となります。

また、一定の要件に該当した場合には、猶予税額の一部又は全額が免除となります。

●全額免除
(1)認定相続人が、その死亡のときまで、特定事業用資産を保有し、事業を継続した場合
(2)認定相続人が一定の身体障害等に該当した場合
(3)認定相続人について破産手続開始の決定があった場合(ただし、過去5年間に認定相続人の青色事業専従者に支払われた給与等で必要経費として認められない額は免除しない)
(4)相続税の申告期限から5年経過後に、次の後継者へ特定事業用資産を贈与し、その後継者がその特定事業用資産について贈与税の納税猶予制度(※平成31年度与党税制改正大綱に盛り込まれたもの)の適用を受ける場合

●一部免除
※非上場株式等についての相続税の納税猶予制度の特例に準じて、猶予税額の一部を免除。
過去5年間に認定相続人の青色事業専従者に支払われた給与等で必要経費として認められない額は免除しない。
(1)同族関係者以外の者へ特定事業用資産を一括して譲渡する場合
(2)民事再生計画の認可決定等があった場合
(3)経営環境の変化を示す一定の要件を満たす場合において、特定事業用資産の一括譲渡又は特定事業用資産に係る事業の廃止をするとき

なお、以下のいずれかに該当した場合には、猶予税額を納付することが必要となります。
(1) 認定相続人が、特定事業用資産に係る事業を廃止した場合等には、猶予税額の全額を納付
(2)認定相続人が、特定事業用資産の譲渡等をした場合には、その譲渡等をした部分に対応する猶予税額を納付

上記(1)(2)の理由により、猶予税額の全部又は一部を納付する場合には、その納付税額について相続税の法定申告期限からの利子税も併せて納付することが必要となりますので、注意が必要です。

※与党の税制改正大綱とは、与党が税制調査会を中心に翌年度以降にどのように税制を変えるべきかを話し合い、まとめたもので、政府は大綱に従って通常国会に税制改正法案を提出するものです。したがって、現段階では法制化されたものではありませんので、今後の審議の行方にご注目ください。

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