いずみ会計事務所の「ためになるブログ」Season2

東京都千代田区二番町(麹町)で開業している「いずみ会計事務所」のブログです。税務・経理や会計の最新動向から、顧問先企業のご紹介まで、女性税理士ならではの視線で綴ります。

税金/消費税

少額な返還インボイスの交付義務免除―令和5年度税制改正の大綱

【ポイント】
令和5年度税制改正の大綱に、1万円未満の値引きや返品等について、返還インボイスを交付する必要がなくなる「少額な返還インボイスの交付義務免除」が盛り込まれました。
全事業者が対象で、適用期限もありません。

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令和5年度税制改正の大綱に「少額な返還インボイスの交付義務免除」が盛り込まれました。
インボイス制度がはじまると、インボイスの交付義務とともに、値引き等を行った際にも値引き等の金額や消費税等を記載した返品伝票などの書類(返還インボイス)の交付義務が課されるのが原則となります。
「少額な返還インボイスの交付義務免除」は、消費税込み1万円未満の返品・値引き・割戻しなどの売上げに係る対価の返還等について、例外的に返還インボイスの交付義務が免除されるものです。

売り手が負担する振込手数料相当額を売上値引きとして処理している場合も、返還インボイスの交付義務免除の対象となります。
ただし、売り手が負担する振込手数料を支払手数料(=課税仕入れ)として処理している場合には、そもそも返還インボイスの交付は必要ありません。

この特例は、事業者の実務的な事務負担の軽減を狙った制度です。
「2割特例」や「1万円特例」と異なり、全ての事業者が対象で、適用期限の定めもありません。

※税制改正の大綱は、令和5年度の税制改正の方向性を示すものです。実際には、法案成立後に決定となります。

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インボイス制度の「2割特例」③適用期間―令和5年度税制改正の大綱

【ポイント】
「2割特例」の適用期間は、2023年10月1日から2026年9月30日までの日の属する各課税期間となります。ただし、2023年9月30日までの期間については2割特例の適用が受けられない点に注意が必要です。

2割特例の適用期間は、2023年10月1日から2026年9月30日までの日の属する各課税期間となります。

例えば、免税事業者である個人事業者が2023年10月1日から登録を受ける場合には、2023(令和5)年分(10月~12月分のみ)の申告から2026(令和8)年分の申告までの計4回の申告が適用対象となります。

また3月決算の法人で、2023年10月1日から登録を受ける場合には、2023(令和5)年度(10~翌3月分のみ)の申告から、2026(令和8)年度の申告までの4回分の申告が特例の対象となります。
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(図の出典:「インボイス制度の負担軽減措置(案)のよくある質問とその回答」(財務省))

ただし、2割特例の適用期間開始はインボイス制度施行後の2023(令和5)年10月1日からであるため、インボイス制度の施行前の期間を含む申告については2割特例の適用を受けられない点に注意が必要です。
例えば、2022年中に課税事業者選択届出書を提出して免税事業者から課税事業者となり、2023年から課税事業者となった個人事業主の場合、2023年1月から9月までの期間については2割特例の対象外となるため、2023(令和5)年分については、2割特例が受けられません。
(2024(令和6)年分については、基準期間における課税売上高が1,000万円を超える等の事情がなければ2割特例を選択できます)

インボイス制度を見越して早めに動いたにも関わらず、特例の恩恵を受けられないのは明らかな不利と言えます。
そのため、2023(令和5)年分の申告について2割特例の適用を受けるかどうかを検討できるように、その課税期間中(この例の場合、法案の施行予定日である2023年4月1日から12月31日まで)に「課税事業者選択不適用届出書」を提出することで、その課税期間(令和5年分)から課税事業者選択届出書の効力を失効できることとされます。

この手続を行うことにより、2023(令和5)年1月~9月分の納税義務が改めて免除され、インボイス発行事業者として登録を受けた令和5年10月1日から12月31日までの期間について納税義務が生じることとなり、その期間について2割特例を適用することが可能となります。

※税制改正の大綱は、令和5年度の税制改正の方向性を示すものです。実際には、法案成立後に決定となります。

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インボイス制度の「2割特例」②対象者―令和5年度税制改正の大綱

【ポイント】
「2割特例」の対象者は、インボイス制度を機に免税事業者からインボイス発行事業者として課税事業者になった方が原則です。
免税事業者から課税事業者になった方であっても、基準期間における課税売上高が1,000万円を超えたため必然的に課税事業者になった方等は適用対象ではありません。

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2割特例の適用対象者は、インボイス制度を機に免税事業者からインボイス発行事業者として課税事業者になった方です。
原則として次のような方が対象者となります。
・ 免税事業者がインボイス発行事業者の登録を受け、登録日から課税事業者となる者
・ 免税事業者が課税事業者選択届出書を提出した上で登録を受けてインボイス発行事業者となる者

免税事業者から課税事業者になった方であっても、基準期間(個人:前々年、法人:前々事業年度)における課税売上高が1,000万円を超えて必然的に免税事業者から課税事業者になった方は、2割特例の対象外となります。
資本金1,000万円以上の新設法人である場合も対象外です。
また、調整対象固定資産や高額特定資産を取得して仕入税額控除を行った場合等、インボイス発行事業者の登録と関係なく事業者免税点制度の適用を受けないこととなる場合課税期間を1か月又は3か月に短縮する特例の適用を受ける場合についても、2割特例の対象となりません。
もちろん、インボイス発行事業者でない方(免税事業者)は、2割特例は関係ありません。


※税制改正の大綱は、令和5年度の税制改正の方向性を示すものです。実際には、法案成立後に決定となります。

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インボイス制度の「2割特例」⓵どういう制度?―令和5年度税制改正の大綱

【ポイント】
令和5年度税制改正の大綱で、免税事業者からインボイス発行事業者になった場合、売上税額の2割を納税額とすることができる、いわゆる「2割特例」が盛り込まれました。



令和5年度税制改正の大綱には、インボイス制度において小規模事業者に対する納税額に係る負担軽減措置が盛り込まれました。その中の一つが、いわゆる「2割特例」と言われるものです。

2割特例とは、免税事業者からインボイス発行事業者になった場合の税負担・事務負担を軽減するため、売上税額の2割を納税額とすることができる、というものです。
消費税の申告を行うためには、通常、経費等の集計やインボイスの保存などが必要となりますが、この特例を適用すれば、所得税・法人税の申告で必要となる売上・収入を税率(8%/10%)ごとに把握するだけで簡単に申告書が作成できるため、事務負担も軽減されます。

具体例を示すと次のようなイメージです。

【具体例】
・売上700万円(税額70万円)※サービス業
・経費150万円(税額15万円)
の場合の納税額


⓵実額計算(本則課税)の納税額:
70万円-15万円=55万円

②簡易課税の納税額:
70万円-35万円(※)=35万円

③2割特例の納税額:
70万円×20%=14万円
(この具体例は「令和5年度税制改正大綱(第二)(抄)」より筆者一部改訂)

2割特例を受ける場合、事前の届出は不要です。申告書に適用するかどうかを記載する欄が設けられる予定ですので、申告書の該当欄にチェックを入れればOKです。原則課税、簡易課税いずれの方法でも、2割特例との選択適用が可能です。
また、2割特例の適用は毎年続ける必要はなく、決算期ごとに有利な方を選べば問題ありません。
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(図の出典:「令和5年度税制改正大綱(第二)(抄)」)

※税制改正の大綱は、令和5年度の税制改正の方向性を示すものです。実際には、法案成立後に決定となります。

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簡易課税制度を選択した際の注意点

【ポイント】
簡易課税制度とは、「みなし仕入率」によって仕入税額控除の計算を行うため、実際の課税仕入れ等の税額をすることなく仕入税額控除の計算ができるメリットがあります。
ただし、必ず納税額が発生する、基準期間の課税売上高が5,000万円を超えると簡易課税制度が適用されないなど、注意すべき点もあります。

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2023年10月1日から、消費税の「インボイス制度」がはじまり、仕入税額控除を受けるために保存すべき請求書等が適格請求書(いわゆるインボイス)に代わります。
インボイスは、免税事業者は発行できないため、とりあえず簡易課税制度を採用する方もいらっしゃるかと思います。

簡易課税制度とは、その課税期間の前々年又は前々事業年度(以下「基準期間」)の課税売上高が5,000万円以下で、簡易課税制度の適用を受ける旨の届出書を事前に提出している事業者が、実際の課税仕入れ等の税額を計算することなく、仕入控除税額の計算を行うことができる、という制度です。

簡易課税制度では、仕入控除税額は課税売上高に対する税額の一定割合となります。
この一定割合を「みなし仕入率」といい、売上げを卸売業、小売業、製造業等、サービス業等、不動産業及びその他の事業の6つに区分し、それぞれの区分ごとのみなし仕入率を適用します。

■みなし仕入率
第一種事業(卸売業)=90%
第二種事業(小売業、農業・林業・漁業(飲食料品の譲渡に係る事業))=80%
第三種事業(製造業等、農業・林業・漁業(飲食料品の譲渡に係る事業を除く))=70%
第四種事業(その他の事業)=60%
第五種事業(サービス業等)=50%
第六種事業(不動産業)=40%


例えば、消費税がかからない費用である人件費の比率が極めて高い事業の場合、簡易課税制度を利用したほうが、納税額が有利になることがあります。
また、課税売上高から仕入税額控除額を計算するため、絶対にインボイスをもらわなくてはいけない!ということもありません。(=消費税の計算のためにインボイスを受けないと不利になることもありません。

ただし、簡易課税制度は以下の点に注意する必要があります。
まず、課税売上高があれば必ず納税額が発生する点は注意してください。
また、一度簡易課税制度を採用した場合、2年間は簡易課税制度をやめることができないのが原則であり、もしも基準期間の課税売上高が5,000万円を超える場合には、その課税期間については、簡易課税制度は適用できず、原則課税が適用されることになります。

課税事業者になる際には、原則課税と簡易課税どちらが有利か、きちんとシミュレーションすることをオススメいたします。
また「簡易課税制度を適用しているから、仕入税額控除を計算するためのインボイスは全く不要」ということではありませんのでご注意ください。


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