いずみ会計事務所の「ためになるブログ」Season2

東京都千代田区二番町(麹町)で開業している「いずみ会計事務所」のブログです。税務・経理や会計の最新動向から、顧問先企業のご紹介まで、女性税理士ならではの視線で綴ります。

Q&A

複数税率に対応していないレシートをもらった場合

【質問】
2019年10月1日以降、複数税率に対応していないレシート等しかもらえなかった場合、そのレシートについては消費税の仕入税額控除はできないのでしょうか?

【回答】
仕入先から交付された請求書等に「軽減税率の対象品目である旨」や「税率ごとに区分して合計した税込み対価の額」の記載がないときは、これらの項目に限り、交付を受けた事業者自らがその取引の事実に基づき追記することができます。

190709領収書

2019年10月1日から消費税の標準税率が10%となり、同時に軽減税率が導入されます。
軽減税率導入後は、軽減税率対象品目の売上げや仕入れ(経費)がある事業者は、制度実施前における請求書等の記載事項に、税率ごとの区分を追加した請求書等(区分記載請求書等)の保存及び区分経理に対応した帳簿の保存が必要となります。
(これを「区分記載請求書等保存方式」といいます)

区分記載請求書等への記載事項は次の通りです。

①請求書発行者の氏名又は名称
②取引年月日
③取引の内容
④対価の額
⑤請求書受領者の氏名又は名称(小売業、飲食店業等不特定多数の者と取引する事業者が交付するものについては省略可)

⑥軽減税率対象品目である旨
⑦税率ごとに区分して合計した税込対価の額


記載事項のうち、①から⑤については、現行の請求書等にも記載が求められているもので、⑥⑦が区分記載請求書等発行の際に新たに記載が必要となる事項です。

ご質問に関連して申し上げますと、複数税率に対応していないレシート等は区分記載請求書等とはいえないため、このままでは仕入税額控除を受けることができないのが原則です。
ただし、仕入先から交付された請求書等に「軽減税率の対象品目である旨」や「税率ごとに区分して合計した税込み対価の額」(区分記載請求書等の記載事項の⑥や⑦)の記載がないときは、これらの項目に限り、交付を受けた事業者自らがその取引の事実に基づき追記することができます。

つまり、「軽減税率対象品目である旨や税率ごとに区分して合計した税込み対価の額」は、お客さん自身がメモ書きしておけば問題ない、ということもできますが、仕入れや経費の支払いの多い事業者の場合、いちいちメモする手間は一苦労です。
どのような事業者の方であっても、お客様のために、複数税率対応レジなど、区分記載請求書等への対応をしておくことが重要です。


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免税事業者にも「軽減税率対応」のレジは必要ですか?

【質問】
当店は消費税の免税事業者ですが、消費税の軽減税率対応のレジは必要なのでしょうか?

【回答】
自社のためというよりも、お客様のために軽減税率対応のレシート等に対応してください。

190702レジ
2019年10月1日から、消費税率が10%に引き上げられるとともに、軽減税率が導入されることとなります。
最近では、この軽減税率導入に伴って、標準税率(10%)と軽減税率(8%)の複数税率に対応したレジ等の導入につき、一定の条件を満たした中小企業・小規模事業者等に対する補助金制度についてテレビCMが流れていますね。

このCMでは「お客様が仕入税額控除を行う場合、税率ごとに合計金額が記載されたレシートの保存が必要です。」といったアナウンスが出てきます。

これは、大雑把に言うと「お店で買い物をしたお客様が会社などの課税事業者だった場合、消費税の納税額を計算するうえで、税率ごとに合計金額が記載されたレシートが必要になる」ということです。

消費税の納税額は、ざっくりというと「売上等の際に預かった消費税額-仕入れや経費の支払いの際に支払った消費税額=納付税額」というのが原則です。
この「仕入れや経費の際に支払った消費税額を、売上等の際に預かった消費税額からマイナスする」ことを「仕入税額控除」といいます。(マイナスすることができる、ということは、実質的に「納税額を低くする」という効果があります。)

「仕入税額控除」のための要件が、複数税率に対応したレシート等の保存ということになりますので、ご自分のお店が消費税の免税事業者であったとしても、お客様のために複数税率に対応したレシートの発行が必要になるのです。


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税込み価格で契約した事務所家賃、消費税アップ後は?

【質問】
ある法人に事務所を賃貸している者です。この法人とは、不動産の賃貸料につき、税込み価格で契約しております。2019年10月1日以後、消費税率が引き上げられた後は、賃貸料としていくらを請求すればよいでしょうか?

【回答】
消費税率引き上げ後は、引き上げ分を上乗せして請求することになります。

180814研修
事務所の家賃などを消費税込みの価格で契約している方も少なくないかと思います。
こうした場合、契約書通りの金額(旧税率)で請求するのか、引き上げ後の税率を適用して請求すればよいのか、迷うところです。

結論的には、消費税率引き上げ後は、引き上げ分を上乗せして請求することになります。

なお、万一、借り手に「税込で契約しているから、契約金額通りの金額しか支払わない」と言われた場合、「買いたたき」(通常支払われる対価に比べて対価の額を低く定めることにより、消費税の転嫁を拒否すること)に該当するとされ、借り手側に公正取引委員会等による調査が行われ、転嫁拒否による不利益の回復など必要な指導が行われることがあります。
重大な転嫁拒否等の行為を行った事業者については、公正取引委員会が勧告を行い、事業者名等を公表します。


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全事業者が対応する?!「区分記載請求書等」って何?

【質問】
消費税率が上がったときに、「区分記載請求書等」が発行できるように準備する必要がある、とききました。私は個人事業主で消費税は免税事業者の扱いになっていますので、関係ないと考えてよいのでしょうか?

【回答】
取引先が仕入税額控除を行うためには、免税事業者からの仕入れについても区分記載請求書等の保存が必要です。免税事業者だから関係ない、ということはありません。

2019年10月から消費税率が原則として10%となるのと同時に一部の資産の譲渡(物品の売買)については軽減税率が適用されることになります。
消費税率が複数税率となることに伴い、現行の請求書の記載事項に税率ごとの区分を追加した請求書等(区分記載請求書等)を売上先に交付することが必要となります。

特に、課税事業者の方が仕入税額控除の適用を受けるためには、区分経理に対応した帳簿及び区分記載請求書等の保存が必要となります(区分記載請求書等保存方式)
そのため、取引先からの要請により区分記載請求書等の発行が必要不可欠になる方がほとんどです。

「うちは消費税の免税事業者だから関係ない」「小さな会社だから関係ない」「飲食料品を取り扱っていないから関係ない
・・・というのは、いずれも誤解です。

なお、区分記載請求書等は以下の記載が必要となります。(3)と(4)が新しい記載になります。

(1)区分記載請求書等発行者の氏名又は名称
(2)課税資産の譲渡等を行った年月日
(3)課税資産の譲渡等に係る資産又は役務の内容(軽減対象資産の譲渡等である旨)
(4)税率ごとに区分して合計した課税資産の譲渡等の対価の額(税込み)
(5)書類の交付を受ける事業者の氏名又は名称

181029区分記載請求書
(画像は「平成31年(2019年)10月1日から消費税の軽減税率制度が実施されます」(国税庁チラシ)より拝借しました)


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税務署から電話が!「調査ではない」と言っていたけれど・・・?

【質問】
税務署から電話があり「申告書の内容に誤りがあるようなので確認してほしい。もしも間違っていたらば修正申告をしてほしい」といわれました。その際に「これは調査ではありません」といわれましたが、これはどういうことで、どう対応すればよいのでしょうか?

【回答】
法律上の「調査」には該当しない(行政指導)ことを示しています。調査に該当しない場合は、修正申告を提出しても自主修正となり、加算税の賦課は行なわれません。
この場合、すぐに申告書の内容をチェックして必要ならば修正申告してください。


180709行政指導
税務署から、この方のような電話照会があることがあります。「調査ではない」といわれつつ、申告内容に疑義をはさまれているような物言いに、戸惑う方も多いかと思います。

まず「調査ではない」というのは、法律上の調査、いわゆる「税務調査」に該当するものではない、ということです。
「調査」は、
・更正決定等を目的として質問検査を行う場合(いわゆる実地調査や、それ以外の机上調査等、来署依頼をして申告内容を確認する場合など)
・更正決定等を目的とせず質問調査を行う場合(異議調査や申請等の調査など)
・更正を目的とするが質問調査は行なわない調査(更正の請求に対して部内処理のみで請求を認める更正を行なう場合など)
がありますが、こうしたものではないということです。

調査ではないとはいえ、申告書の内容に間違いがあるのでは?と指摘された以上、すみやかに申告内容をチェックしたほうがよいでしょう。
この場合、もしも間違いが見つかって修正申告をした場合、調査の場合と異なり、自主修正をしたという取り扱いとなるため、加算税の賦課は行なわれません。(ですから、早めにチェックして修正申告を出してしまうことをオススメします!)

調査に該当するかどうかによって、加算税の取り扱いが異なりますので、税務署がこのような照会をする際には「調査か調査でないか」を税務署側から説明することとされています。
もしも説明がない場合、「これは調査ですか、単なる行政指導ですか」と聴いてみてもよいでしょう。

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