いずみ会計事務所の「ためになるブログ」Season2

東京都千代田区二番町(麹町)で開業している「いずみ会計事務所」のブログです。税務・経理や会計の最新動向から、顧問先企業のご紹介まで、女性税理士ならではの視線で綴ります。

免税事業者

インボイス制度の「2割特例」③適用期間―令和5年度税制改正の大綱

【ポイント】
「2割特例」の適用期間は、2023年10月1日から2026年9月30日までの日の属する各課税期間となります。ただし、2023年9月30日までの期間については2割特例の適用が受けられない点に注意が必要です。

2割特例の適用期間は、2023年10月1日から2026年9月30日までの日の属する各課税期間となります。

例えば、免税事業者である個人事業者が2023年10月1日から登録を受ける場合には、2023(令和5)年分(10月~12月分のみ)の申告から2026(令和8)年分の申告までの計4回の申告が適用対象となります。

また3月決算の法人で、2023年10月1日から登録を受ける場合には、2023(令和5)年度(10~翌3月分のみ)の申告から、2026(令和8)年度の申告までの4回分の申告が特例の対象となります。
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(図の出典:「インボイス制度の負担軽減措置(案)のよくある質問とその回答」(財務省))

ただし、2割特例の適用期間開始はインボイス制度施行後の2023(令和5)年10月1日からであるため、インボイス制度の施行前の期間を含む申告については2割特例の適用を受けられない点に注意が必要です。
例えば、2022年中に課税事業者選択届出書を提出して免税事業者から課税事業者となり、2023年から課税事業者となった個人事業主の場合、2023年1月から9月までの期間については2割特例の対象外となるため、2023(令和5)年分については、2割特例が受けられません。
(2024(令和6)年分については、基準期間における課税売上高が1,000万円を超える等の事情がなければ2割特例を選択できます)

インボイス制度を見越して早めに動いたにも関わらず、特例の恩恵を受けられないのは明らかな不利と言えます。
そのため、2023(令和5)年分の申告について2割特例の適用を受けるかどうかを検討できるように、その課税期間中(この例の場合、法案の施行予定日である2023年4月1日から12月31日まで)に「課税事業者選択不適用届出書」を提出することで、その課税期間(令和5年分)から課税事業者選択届出書の効力を失効できることとされます。

この手続を行うことにより、2023(令和5)年1月~9月分の納税義務が改めて免除され、インボイス発行事業者として登録を受けた令和5年10月1日から12月31日までの期間について納税義務が生じることとなり、その期間について2割特例を適用することが可能となります。

※税制改正の大綱は、令和5年度の税制改正の方向性を示すものです。実際には、法案成立後に決定となります。

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インボイス制度の「2割特例」②対象者―令和5年度税制改正の大綱

【ポイント】
「2割特例」の対象者は、インボイス制度を機に免税事業者からインボイス発行事業者として課税事業者になった方が原則です。
免税事業者から課税事業者になった方であっても、基準期間における課税売上高が1,000万円を超えたため必然的に課税事業者になった方等は適用対象ではありません。

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2割特例の適用対象者は、インボイス制度を機に免税事業者からインボイス発行事業者として課税事業者になった方です。
原則として次のような方が対象者となります。
・ 免税事業者がインボイス発行事業者の登録を受け、登録日から課税事業者となる者
・ 免税事業者が課税事業者選択届出書を提出した上で登録を受けてインボイス発行事業者となる者

免税事業者から課税事業者になった方であっても、基準期間(個人:前々年、法人:前々事業年度)における課税売上高が1,000万円を超えて必然的に免税事業者から課税事業者になった方は、2割特例の対象外となります。
資本金1,000万円以上の新設法人である場合も対象外です。
また、調整対象固定資産や高額特定資産を取得して仕入税額控除を行った場合等、インボイス発行事業者の登録と関係なく事業者免税点制度の適用を受けないこととなる場合課税期間を1か月又は3か月に短縮する特例の適用を受ける場合についても、2割特例の対象となりません。
もちろん、インボイス発行事業者でない方(免税事業者)は、2割特例は関係ありません。


※税制改正の大綱は、令和5年度の税制改正の方向性を示すものです。実際には、法案成立後に決定となります。

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インボイス制度の「2割特例」⓵どういう制度?―令和5年度税制改正の大綱

【ポイント】
令和5年度税制改正の大綱で、免税事業者からインボイス発行事業者になった場合、売上税額の2割を納税額とすることができる、いわゆる「2割特例」が盛り込まれました。



令和5年度税制改正の大綱には、インボイス制度において小規模事業者に対する納税額に係る負担軽減措置が盛り込まれました。その中の一つが、いわゆる「2割特例」と言われるものです。

2割特例とは、免税事業者からインボイス発行事業者になった場合の税負担・事務負担を軽減するため、売上税額の2割を納税額とすることができる、というものです。
消費税の申告を行うためには、通常、経費等の集計やインボイスの保存などが必要となりますが、この特例を適用すれば、所得税・法人税の申告で必要となる売上・収入を税率(8%/10%)ごとに把握するだけで簡単に申告書が作成できるため、事務負担も軽減されます。

具体例を示すと次のようなイメージです。

【具体例】
・売上700万円(税額70万円)※サービス業
・経費150万円(税額15万円)
の場合の納税額


⓵実額計算(本則課税)の納税額:
70万円-15万円=55万円

②簡易課税の納税額:
70万円-35万円(※)=35万円

③2割特例の納税額:
70万円×20%=14万円
(この具体例は「令和5年度税制改正大綱(第二)(抄)」より筆者一部改訂)

2割特例を受ける場合、事前の届出は不要です。申告書に適用するかどうかを記載する欄が設けられる予定ですので、申告書の該当欄にチェックを入れればOKです。原則課税、簡易課税いずれの方法でも、2割特例との選択適用が可能です。
また、2割特例の適用は毎年続ける必要はなく、決算期ごとに有利な方を選べば問題ありません。
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(図の出典:「令和5年度税制改正大綱(第二)(抄)」)

※税制改正の大綱は、令和5年度の税制改正の方向性を示すものです。実際には、法案成立後に決定となります。

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インボイス制度で免税事業者がとる方法は三択?!-(3)簡易課税制度を適用する

【ポイント】
インボイス制度がはじまると、「インボイスの保存」が消費税の仕入税額控除の要件となります。インボイスは消費税の課税事業者しか発行することができません。
免税事業者の場合、インボイス制度が始まったときに取りうる方法の一つが「簡易課税制度を適用する」です。基準期間の課税売上高が5,000万円以下の事業者は、簡便な計算により仕入税額控除の金額を計算することができます。

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2023年10月1日から、消費税の「インボイス制度」がはじまり、仕入税額控除を受けるために保存すべき請求書等が適格請求書(いわゆるインボイス)に代わります。

インボイスは、税務署長の登録を受けた「適格請求書発行事業者」(いわゆる「インボイス発行事業者」)しか発行することができませんが、インボイス発行事業者として登録を受けられるのは、消費税の課税事業者(=消費税の申告・納税が必要な方)に限られます。
つまり、免税事業者はインボイスが発行できません。

最悪の場合、「インボイスを発行してくれる事業者じゃないと仕入税額控除ができないから、なるべくインボイスを発行しない事業者との取引を少なくする」と、取引先事業者から選別される可能性も否定できず、小規模事業者にとっては死活問題になり得る大きな問題です。

インボイス制度に対して、免税事業者が取りうる選択肢は3つになります。
(1)メリット・デメリット双方を理解したうえで免税事業者を続ける
(2)消費税の課税事業者(原則課税)になる
(3)消費税の簡易課税制度を適用する


このうち、今回は「(3)消費税の簡易課税制度を適用する」についてお話しいたします。

消費税の納税額の計算は、原則として
課税売上げに係る消費税額-課税仕入れ等に係る消費税額
で計算します。
しかし、その課税期間の前々年又は前々事業年度(以下「基準期間」)の課税売上高が5,000万円以下で、簡易課税制度の適用を受ける旨の届出書を事前に提出している事業者は、実際の課税仕入れ等の税額を計算することなく、仕入控除税額の計算を行うことができます。
これを簡易課税制度といいます。

簡易課税制度は、文字通り簡易な計算方法で仕入税額控除が計算できる点がメリットですが、注意点もあります。
詳しくは、次の機会にお話しいたします。


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インボイス制度で免税事業者がとる方法は三択?!-(2)消費税の課税事業者になる

【ポイント】
インボイス制度がはじまると、「インボイスの保存」が消費税の仕入税額控除の要件となります。インボイスは消費税の課税事業者しか発行することができません。
免税事業者の場合、インボイス制度が始まったときに取りうる方法の一つが「課税事業者(原則)になる」です。赤字企業でも消費税の納税額が発生する可能性が高いのでキャッシュフローに注意しましょう。



2023年10月1日から、消費税の「インボイス制度」がはじまります。
現在、消費税の「仕入税額控除」を受けるには、一定の帳簿や請求書等を保存していることが条件となっていますが、インボイス制度のもとでは保存すべき請求書等が適格請求書(いわゆるインボイス)に代わります。

インボイスは、税務署長の登録を受けた「適格請求書発行事業者」(いわゆる「インボイス発行事業者」)しか発行することができませんが、インボイス発行事業者として登録を受けられるのは、消費税の課税事業者(=消費税の申告・納税が必要な方)に限られます。
つまり、免税事業者(基準期間(2年前)の課税売上高が1000万円以下の方などの小規模事業者で消費税の申告・納税義務のない方)はインボイスが発行できないということです。

インボイス制度に対して、免税事業者が取りうる選択肢は3つになります。
(1)メリット・デメリット双方を理解したうえで免税事業者を続ける
(2)消費税の課税事業者(原則課税)になる
(3)消費税の簡易課税事業者になる


このうち、今回は「(2)消費税の課税事業者(原則)になる」についてお話しいたします。課税事業者になれば当然、インボイス発行事業者になることができます。

免税事業者が登録を受けるためには、原則として、消費税課税事業者選択届出書(以下「課税選択届出書」といいます。)を提出し、課税事業者となる必要があります。
ただし、インボイス登録日が令和5年10月1日の属する課税期間中である場合は、課税選択届出書を提出しなくても、「登録申請書」を提出し、審査を受けることで登録できます。

消費税の課税事業者(原則)になった場合、消費税の納税額は
売上げ等で預かった消費税額-仕入れ・経費の支払い等で支払った消費税額(インボイスがあるものに限る)=納付する消費税額
として計算します。
仕入・経費の支払い等で支払った消費税額をマイナスすること「仕入税額控除」といいます。

ここで注意すべきは、人件費は仕入税額控除の対象にならないことです。
人件費は消費税がかからない取引で、支払った消費税額がないからです。
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業績自体が赤字でも、消費税は納付する可能性が高くなります。
意外と金額がかさむことも多いので、資金繰りには常に注意しておきましょう。
例えば消費税納付のために毎月一定額を積み立てておくと、納付の際の資金繰りの一助になりますよ。


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