いずみ会計事務所の「ためになるブログ」Season2

東京都千代田区二番町(麹町)で開業している「いずみ会計事務所」のブログです。税務・経理や会計の最新動向から、顧問先企業のご紹介まで、女性税理士ならではの視線で綴ります。

現物給与

在庫を社員に販売したとき

【質問】
売れ残った商品を社員に対して割引販売しようと思います。大体、いくらくらいで売るのが妥当でしょうか?正直、原価程度の価格で販売してもかまわないと思っているのですが・・・

【回答】
不良在庫を著しく安い値段で販売すると、社員に対する現物給与とみなされ、給与として源泉所得税の対象となることがあります。
商品が流行り廃りのあるもの(洋服など)でなければ、会社で取得した価格以上であり、かつ実際の販売価格の70%以上で販売したものについては、給与課税されません。



 社内で売れ残った商品を社員に対して値引き販売することは、ご相談の方以外でも頻繁に行われています。

 不良在庫として倉庫に眠らせておくよりも、値引きしてでも販売した方が経営的に健全です。
 社員にとっても、商品を安く入手できるのですから役得?!と言えるかもしれません。

 ただし、不良在庫だからといって、著しく安い値段で販売すると、社員に対する「現物給与」とみなされ、給与として源泉所得税の課税対象となってしまうので注意が必要です。

 社員販売を行う場合、社員に対する商品の販売価格が「会社で取得した価額」以上であると同時に、実際の販売価格の70%以上であれば、給与課税されることはありません。

 またその際、商品の値引率が全社員一律である、または、役職、勤務年数などに応じて合理的に算定されたものでなければなりません。

 ただし、販売価格については、必ずしも「実際の販売価格の70%以上」でなければならないというわけではありません。

 たとえば、衣料品のような流行り廃りのある商品であれば、いちど流行遅れになってしまうと通常価格で販売することは難しくなります。

 このような場合、在庫商品の評価損を計上することになりますが、それにより商品の原価、販売価格も低下することになります。

 結果として商品の原価、販売価額も低下するので、実際には70%を下回っていても現物給与とされないケースも出てきます。


 ところで、販売価格が安いからといって、自社商品を大量に購入する社員が出てきた場合は注意が必要です。

 一般に家庭で消費される量を著しく超える値引き販売が行われた場合には、仮に価格や値引率が適正でも現物給与とみなされることがあります。


いずみ会計事務所へのご相談は>>コチラから

無償・低額提供される自社製品の購入

【質問】
某製品のメーカーです。このたび社員への自社製品購入制度を導入しようと思っています。
何か気をつけることがあったらば教えてください。

【回答】
役員や社員への自社製品・商品の販売で、通常の販売価格より著しく低額、あるいは無償で提供したものは、現物給与として源泉徴収が必要となる場合があります。



 ご相談の方のように、メーカーや小売店、不動産会社などで、従業員による自社製品・商品の購入制度を設けているところがあります。

 なかには、経済の停滞にともなう業績不振から、やむを得ず自社製品の購入を一定以上の役職者に奨励する会社もあるようです。
(ずいぶん前ですが、かなり大きな企業がボーナスを自社製品で・・・という話、聞いたことあります)

 このような自社の役員や社員への自社製品・商品の販売で、税務上注意しなければならないのが、通常の販売価格より値引きして提供する場合です。


 社員や役員などに無償あるいは低額で提供された自社製品や商品は、原則として「現物給与」として給与扱いとなり、源泉徴収が必要となる場合があります。

 会社などが通常受け取るべき額と、社員などから実際に受け取った金額との差額が、「経済的利益」、つまり給与額となるのです。


 この「経済的利益」の価額の評価方法は、業種によって異なります。

 製造業者が自家製品を支給する場合は、製造業者販売価額となります。

 卸売業者が取扱商品を支給する場合は、卸売価額。

 小売業者が取扱商品を支給する場合は小売価額となります。


 また、使用者が通常ほかに販売する物品でないものを支給する場合には、その物品の通常売買される価額によります。


 しかし、その製品・商品について、
●値引販売の価額が、使用者の取得価額以上で、しかも、通常ほかに販売する価額のおおむね70%以上である
●値引率が、役員や使用人の全部について一律に、または役員や使用人の地位、勤続年数などに応じて全体として合理的なバランスが保たれる範囲内の格差により定められていること
●数量が、一般の消費者が家事のために通常消費すると認められる程度のものである

・・・といった条件を満たした場合は、課税されません。



いずみ会計事務所へのご相談は>>コチラから