いずみ会計事務所の「ためになるブログ」Season2

東京都千代田区二番町(麹町)で開業している「いずみ会計事務所」のブログです。税務・経理や会計の最新動向から、顧問先企業のご紹介まで、女性税理士ならではの視線で綴ります。

役員給与

業績悪化で役員報酬の減額、税務上の取り扱いは?-新型コロナウイルス感染症の影響

【質問】
当社は新型コロナウイルス感染症の影響により予定していた収入がなくなり、家賃や従業員の給与等の支払いもままならない状況です。
そのため、役員給与の減額を行いたいと思うのですが、税務上、問題はないでしょうか?

【回答】
この場合の役員給与の減額改定は、法人税法上の「業績悪化改定事由」に該当する可能性が高く、改定前に定額で支給していた役員給与も改定後に定額で支給する役員給与も定期同額給与に該当し、損金算入することができるでしょう。

200811

新型コロナウイルス感染症の影響により、予定していた収入がなくなって日々の支払いにも苦慮する方が増えています。
御相談の方のように、こんな時だからこそ、社長の給与を減額してでも事業を続けたいと考える方は多いかと思います。

しかし、役員給与等の金額を会社の業績によって自由に上げたり下げたりできると、利益操作の温床にもなりかねないため、法人税法上、役員給与等は決められた方法により支払っていない場合は損金不算入とする措置がとられています。役員給与等の支払い方の代表例が「定期同額給与」で、多くの中小企業はこの方法により役員給与等を支払っているかと思います。
定期同額給与のことを少し乱暴にまとめると、「毎月同じ金額の給与を1年間支払い続けないと、その役員給与等は損金不算入になる」ということです。

しかし、定期同額給与には例外の規定があります。
そのうちの一つが、「その事業年度においてその法人の経営状況が著しく悪化したこと等によりされた定期給与の額の減額改定」(業績悪化改定事由)です。
これに該当する場合は、たとえ期中で役員給与等の金額が変わっていても「定期同額給与」となり、全額が損金算入されます。


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期中で役員給与を改定した場合の取扱い

 世間では「景気は緩やかな回復」などと言われていますが、中小企業経営者の方々の中には、いまだ景気回復を実感できない方も多いのではないでしょうか。

 中には、業績回復が思わしくなく、やむなく人件費を削っている、という企業もあるかもしれません。
 今日はそんな人件費のうち、役員給与を改定した場合のお話をいたします。


 もし期中で役員給与を減額した場合、原則としてその期に支払った役員給与の全額が損金にならないことも起こりえます。

 たとえば80万円の役員給与を7ヶ月支払った後、70万円に減額して5ヶ月支払ったような場合、80万円×7ヶ月+70万円×5ヶ月=910万円全額が損金不算入となり、法人税が課税されることになります。

 役員給与は、任意にあるいは随時に変更することについて、税務上、一定の制限がされる仕組みになっています。


 ただし、これにはいくつかの特例があります。

 まず、業績が著しく悪化したこと(その他これに類する理由を含む)により、役員給与を改定した場合は、たとえ期中で改定しても役員給与は全額損金として認められます。

 また、会計期間開始の日から3月を経過する日までに改定された場合も、全額損金として認められます。

 役員給与の支給額を定める時期が一般的に定時株主総会のときであることや、事業年度終了の日間近の改定を容認すると、利益の払い出しの性格を有する役員給与の増額改定を認めることにつながる等の理由から、この規定が定められています。

 以上が法人税法施行令に定められている特例です。

 この他、改定前に支給された金額と改定後に支給された金額の差額のみを損金不算入とする、という事例が、昨年12月に国税庁から発表された「役員給与に関する質疑応答事例」に書かれていました。

 たとえば80万円の役員給与を7ヶ月支払った後、70万円に減額して5ヶ月支払ったような場合、(80万円-70万円)×5ヶ月=50万円が損金不算入となる、ということです。


 この事例については、まだどの法令にも定められていません。
 おそらく今後は通達などで取扱い詳細について補完がされていくと思います。

 もし実際に施行されれば、資金繰り等がやや厳しめの企業にとって注目すべき改定になりそうです。
 今後の動きに要注意ですね。