いずみ会計事務所の「ためになるブログ」Season2

東京都千代田区二番町(麹町)で開業している「いずみ会計事務所」のブログです。税務・経理や会計の最新動向から、顧問先企業のご紹介まで、女性税理士ならではの視線で綴ります。

改定

NISA大改正!そのポイントとこれまでの制度との違いは?―令和5年度税制改正の大綱

【ポイント】
個人投資家の優遇制度「NISA」の抜本的な改正が行われる予定です。ポイントは①生涯投資枠1800万円に拡大、②年間投資上限額が360万円に、③非課税期間は無期限になること、が挙げられます。

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令和5年度税制改正の大綱で最も注目されたトピックスの一つが、個人投資家の優遇制度「NISA」の抜本的な拡充・恒久化です。
2024年から始まる非常にインパクトのある改正で、内容も盛りだくさんです。
ポイントだけを上げるとするならば、次の3点です。これまでの制度と比べて何が違うのかをざっくりまとめると、次の通りです。

⓵生涯投資枠1800万円に拡大
これまでのNISAでは、一般NISAが年120万円×5年間の600万円分の投資が、つみたてNISAが年40万円×20年の800万円分の投資が非課税とされていました。
新しい制度では生涯投資枠として1800万円と、その枠自体が大幅に増額されています。
そんなに使い切れない!という方もいらっしゃるくらいの増額っぷりですが、枠を使う期間が長い若い方にとっては嬉しい改正ではないでしょうか。

②年間投資上限額が360万円に
これまでの一般NISAの年間投資上限額120万円、つみたてNISAの40万円から、年360万円(つみたて投資枠120万円、成長投資枠240万円)に大幅に増額されます。
年360万円ということは毎月最大30万円です!ただし、これはあくまでも上限額ですので、自分のペースでできる範囲で枠を使っていけば問題ありません。
また、金銭的余裕のある時は年200万円、育児や介護などで金銭的余裕のないときは投資しない、といった柔軟な制度であることも、実生活に則した改正ではないでしょうか。

③非課税期間が無期限に
これまでは一般NISAが5年、つみたてNISAが20年という期限の縛りがありました。
特に一般NISAの場合、5年の非課税期間終了後は原則として特定口座に払い出されることになります。特定口座に払い出されたときの取得価額は、払い出されたときの時価になるため、払い出し時に時価が下がっていると、NISAを始めた頃の価格に戻ったとしても、その値上がり分は課税されてしまうことになります。(こうした不利益を防ぐために、非課税期間経過後、その商品を新たな非課税投資枠に移す「ロールオーバー」という制度がありました。)
非課税期間が無期限になることで、特定口座に移す際の時価の付け替えによる不利については考えなくてよくなります。

全体的に、投資を行う方(若い方は特に!)には、非常に有利な改正である、と言えそうです。
各ポイントの詳細については、次回以降でお話しいたします。

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事業年度途中で役員報酬減額は要注意!

【質問】
当社の上半期が終了し、中間で試算表を見直してみました。
当期は業績が芳しくなく、下半期にも大きな売上が期待できないため、資金繰りと利益確保のために、社長である私の給与を減額しようと思っています。
何か注意すべき点はありますか?

【回答】
役員給与を改定する場合、税務上の損金算入が認められる「定期同額給与」の範疇に収まるかどうか、に十分注意を払うことがポイントです。
利益を確保するために役員給与を減額するという場合、損金に算入できなくなる可能性あります。



 業績が悪化してしまった場合の対応策に頭を悩ます中小企業経営者は数多くいらっしゃることと思います。
 支出を抑えて利益を確保したい場合には、まずは経営責任者として社長である自分の役員報酬を削ることを真っ先に考える方もいらっしゃることでしょう。(役員報酬は支出そのもの、損金そのものですからね)

 ご相談の方のように、上半期の業績が思わしくなく、事業年度の途中で役員報酬の減額を考える経営者の方もいらっしゃるかもしれません。

 しかし、役員報酬の金額変更は、増額も減額も注意しなければいけません。
 利益を確保するために役員給与を減額するという場合、損金に算入できなくなる可能性があるからです。

 役員給与を改定する場合のポイントは、税務上の損金算入が認められる「定期同額給与」の範疇に収まるかどうか、に十分注意を払うことです。

 改定後の役員給与が定期同額給与として認められるには、その改定が
(1)事業年度開始の日から3カ月以内に行われる定時改定
(2)役員の職制上の地位の変更や職務内容の重大な変更等が生じた場合の改定
(3)経営状況が著しく悪化したことによる減額改定

のいずれかに該当しなければなりません。

今回、ご相談の方は(3)に近いように思いますが、「経営状況が著しく悪化した場合」とは、
(ア)株主との関係上、業績や財務状況の悪化についての役員としての経営上の責任から役員給与を減額せざるを得なくなった場合、
(イ)取引銀行との間で行われる借入金返済のリスケジュールの協議において、役員給与を減額せざるを得なくなった場合、
(ウ)業績や財務内容または資金繰りが悪化したため、取引先等の利害関係者からの信用を維持・確保する必要性から、経営状況の改善を図るための計画が策定され、これに役員給与の減額が盛り込まれた場合

を指します。

 つまり、単に利益を確保するためだけの改定では「定期同額給与」とは認められず、損金に算入できない可能性があります。
 御社の場合、条件に該当するかどうかを検討してください。


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期中で役員給与を改定した場合の取扱い

 世間では「景気は緩やかな回復」などと言われていますが、中小企業経営者の方々の中には、いまだ景気回復を実感できない方も多いのではないでしょうか。

 中には、業績回復が思わしくなく、やむなく人件費を削っている、という企業もあるかもしれません。
 今日はそんな人件費のうち、役員給与を改定した場合のお話をいたします。


 もし期中で役員給与を減額した場合、原則としてその期に支払った役員給与の全額が損金にならないことも起こりえます。

 たとえば80万円の役員給与を7ヶ月支払った後、70万円に減額して5ヶ月支払ったような場合、80万円×7ヶ月+70万円×5ヶ月=910万円全額が損金不算入となり、法人税が課税されることになります。

 役員給与は、任意にあるいは随時に変更することについて、税務上、一定の制限がされる仕組みになっています。


 ただし、これにはいくつかの特例があります。

 まず、業績が著しく悪化したこと(その他これに類する理由を含む)により、役員給与を改定した場合は、たとえ期中で改定しても役員給与は全額損金として認められます。

 また、会計期間開始の日から3月を経過する日までに改定された場合も、全額損金として認められます。

 役員給与の支給額を定める時期が一般的に定時株主総会のときであることや、事業年度終了の日間近の改定を容認すると、利益の払い出しの性格を有する役員給与の増額改定を認めることにつながる等の理由から、この規定が定められています。

 以上が法人税法施行令に定められている特例です。

 この他、改定前に支給された金額と改定後に支給された金額の差額のみを損金不算入とする、という事例が、昨年12月に国税庁から発表された「役員給与に関する質疑応答事例」に書かれていました。

 たとえば80万円の役員給与を7ヶ月支払った後、70万円に減額して5ヶ月支払ったような場合、(80万円-70万円)×5ヶ月=50万円が損金不算入となる、ということです。


 この事例については、まだどの法令にも定められていません。
 おそらく今後は通達などで取扱い詳細について補完がされていくと思います。

 もし実際に施行されれば、資金繰り等がやや厳しめの企業にとって注目すべき改定になりそうです。
 今後の動きに要注意ですね。