いずみ会計事務所の「ためになるブログ」Season2

東京都千代田区二番町(麹町)で開業している「いずみ会計事務所」のブログです。税務・経理や会計の最新動向から、顧問先企業のご紹介まで、女性税理士ならではの視線で綴ります。

節税

相続税対策スキーム封じ?!小規模宅地の特例に改正か?

【ポイント】
2018年度税制改正で、小規模宅地の特例の中で、相続が発生したときに、一定の要件を満たした相続人が、被相続人と同居していなくても3年以上持ち家がなければ減税を受けることができる、いわゆる「家なき子」の特例について、改正が入るもようです。



2018年度の税制改正で、相続税の過度な節税を防ぐ措置の導入が検討されています。
その一つが、小規模宅地の特例の中で、いわゆる「家なき子」の特例に関するものです。

小規模宅地の特例とは、本来、相続により、亡くなった人(被相続人)の配偶者や子など同居していた人の税負担を軽減するために導入されたもので、相続人と同居していた土地を相続した場合、土地の評価額を最大で8割減らして相続を受ける人の税負担を減らす、というものです。

ただし、小規模宅地の特例の中に「被相続人の配偶者及び同居相続人がいないこと」「3年以上持ち家がないこと(=借家住まいであること)」など一定の要件を満たした場合は、小規模宅地の特例と同様の減税を受けることができる、という規定があります。これが「家なき子」の特例といわれるものです。

そのため、持ち家をあらかじめ親族に贈与する節税スキームが流行しています。
スキームの一例を説明すると、祖父、父、子の三世代の一族で、祖父と父がそれぞれマイホームを持っている、と仮定します。
このスキームをが使おうとした場合、あらかじめ子に対してマイホーム(家屋)を贈与します。贈与から3年たつと、父は持ち家のない「家なき子」になります。
親族(この場合は子)の持っている家に無償で住んでいる場合も、家を「所有」していなければ「持ち家がない」とされるため、父の日常生活になんら支障はありません。
父が子にマイホームを贈与して3年以上経過して祖父が亡くなり、相続が発生したときに、父は「家なき子」の特例を使って祖父の宅地の評価額を小規模宅地の特例同様の有利な条件にする、というイメージです。
親と同居したくないけれど相続税はオトクにしたい!という方などは、このスキームを検討された方も少なくないかと思います。

今回の改正で、相続人(主に子)が相続時に住んでいた家が、もともと相続人が所有していた家だった場合や、相続人が3親等以内の親族が所有する家に住んでいる場合などは対象外にすることなどを検討しているそうです。

こうした相続税スキームは、早めに動くのがポイントになってきますが、たとえ不利になる法改正があっても一度動いてしまうと後戻りしにくいというデメリットもあります。
今回説明した改正は、まだ検討段階ではありますが、相続税対策は将来的な法改正の可能性も含めて、慎重に考えるよう、心がけてください。


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家賃を前払いすると節税になる!?

【質問】
家賃を1年分前払いすれば、支払った分は当期の費用に計上でき、
節税対策になると聞いたのですが、本当でしょうか?

【回答】
条件により、家賃などの1年以内の短期の前払費用については、当期に支払った分を
当期に損金算入でき、節税対策につながることもあります。

まず前払費用とは、法人が一定の契約により継続的に役務の提供を受けるために支出した費用のうち、その事業年度終了の時において“まだ提供を受けていない役務に対応する費用”をいいます。

前払費用の例としては、家賃や保険料、工業所有権等の使用料などがあります。この前払費用は、原則として、支出時には損金算入できず、支払いがあった事業年度以降にはじめて損金算入すべきものです。

しかし、以下の条件を満たす1年以内の短期の前払費用については、例外的にその支払いがあった事業年度に損金算入できる処理を認めています。

(法人税基本通達2-2-14)
1.一定の契約に従って継続的に役務の提供を受けるものであること
2.支払日から1年以内に役務の提供を受けるものであること
3.毎期継続して同様の経理処理をおこなうこと
4.収益と直接対応させる必要のある費用でないこと
5.当期中に支払いが済んでいること

例えば3月末決算法人が、年払の契約により、4月から翌年3月までの1年分の家賃を3月末までに支払う場合は、条件の1から5にすべて当てはまりますので、支払時点の事業年度に損金算入できます。

逆に、支払時点の事業年度への損金算入が認められないケースもあります。上記の家賃の例において、4月から翌年4月までの13か月分の家賃を支払っていれば、条件2を満たしませんし、利益が出たから年払、出なかったからと月払というように年度ごとに契約変更している場合は、条件3を満たしませんので、支払時点の事業年度への損金算入は認められません。

また、特定のサービスを一時的に受けるためにあらかじめ支払った対価や継続的な物品の購入などの費用は、前払費用ではなく前払金に該当するため、これらの費用も適用外となります。

例えば、前払給料・前払顧問料・翌期放映のテレビCMなどは一般的に特定のサービスをその時々に受けるためのものですから、前払金として処理するのが妥当です。

借入金を預金、有価証券等に運用する場合のその借入金に係る支払利子のように、収益の計上と対応させる必要があるものについては、条件4に該当しませんので、この場合も適用外となります。


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利益が出たから節税したい?!

【質問】
利益が出ると多くの税金を支払うのがもったいないと思い、節税したくなります。
何かいい方法はないでしょうか。

【回答】
利益が出ると節税したくなる経営者さんの気持ちもよく分かりますが、節税が業績の障害になり、破綻につながる可能性もあることをご存知でしょうか。

「税金を支払うのがもったいなくて、つい節税してしまう」という顧問先さんのお声をよく聞き、お話させて頂いていることをご紹介したいと思います。

自己資本比率が高く、会社の経営基盤が磐石であったり、成熟した産業で新たな投資を必要としないようなケース等は、節税対策が有効となることもありますが…。

通常、節税を行うと損益計算書の純利益が減り、貸借対照表に計上される利益剰余金も節税前と比べて減ることになります。自己資本の一部である、この利益剰余金が増えないということは、自己資本比率が改善されない(高まらない)、ということになります。

自己資本比率は会社経営の安定性を図る重要な指標のひとつであるため、自己資本比率が低い場合、金融機関から融資を受けられない場合があります。

よって、利益を出しても過度に節税を行うと自己資本比率の改善につながらず、経営基盤の強化や事業拡大のチャンスを逃すことにもなりかねません。最悪のケースとして、本当に必要なときに銀行の融資が受けられず、企業破綻につながるということも考えられます。

利益を出し、税金を支払い、その残りである余剰金が増えれば、会社の体力がつきます。
節税に意識を向けるのではなく、「自己資本比率を高める」という目標を持つことも重要です。

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(つぶやき)節約手段が無いもの

「税金も高いけど、社会保険も高いね」
これは経営者からよく聞くため息まじりの雑談です。

はい、私もよくそれを感じます。

社会保険は会社が赤字か黒字か関係なく、給与があれば必ず発生します。

税金は「節税」という考え方がある種でありますが
社会保険にはほとんど節約手段がありません。

「社会保険は、高いね~」
このため息は、これから先も経営者からよく聞くため息になりそうです。

終身保障タイプのがん保険の取扱いが変更に

【質問】
終身保障タイプのがん保険が節税になると聞きました。
どのように節税になるのか教えて下さい。

【回答】
これまでは、支払保険料は全額損金に算入できましたが、2012年4月28日から終身保障タイプのがん保険に対する取扱いが変わりました。
保険期間開始の時から保険期間の50%相当期間を経過するまでの期間(前払期間)の間は、支払った保険料の一部を資産として計上することになります。



 これまでは、契約者・保険受取人が法人、被保険者を役員又は従業員とするがん保険契約で、一定の要件に該当するがん保険は、終身保障タイプの場合でも、全額損金扱いとなっていました。

 しかし国税庁は
「がん保険(終身保障タイプ)に係る取扱いは、2012年4月27日をもって廃止する。」
(ただし、同日前の契約に係るがん保険(終身保障タイプ)に係る取扱いについては、なお従前の例による)
との取扱いを公表しました。

 今後契約するがん保険については、以下のような取扱いとなります。

● 終身払込の場合
加入時の年齢から105 歳までの期間を計算上の保険期間とします。
この保険期間開始の時から保険期間の50%に相当する期間を経過するまでの期間(前払期間)と、前払期間経過後では損金算入額が変わります。

イ 前払期間
各年の支払保険料の額のうち2分の1に相当する金額を前払金等として資産に計上し、残額を損金の額に算入する。

ロ 前払期間経過後の期間
各年の支払保険料の額を損金の額に算入するとともに、前払期間に資産計上した保険料の金額から一定の計算式にのっとって取り崩し、損金の額に参入する。

有期払込(一時払を含む。)についても、似たような処理となります。

これまでがん保険は「節税」のノウハウとして広く使われてきましたが、節税目的では少し使いづらくなるかもしれませんね。
とはいえ、がんは多くの人が亡くなる原因ともなる病気です。
経営者は保険本来の目的を今一度考えて、検討されてもいいのでは?と思います。


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